前半はこちら:#3rules ~ウォーキングスペシャリスト吉川恵一【前編】~
#Nutrition
食事において大切にしているのは、タイミングとボリュームの調節。
―吉川さんは、日ごろどのような食事を召し上がっていますか?
そうですね、仕事柄不規則になりがちなので、まずは朝にざっくりと1日の流れを追いかけてみて、食のタイミングを探します。そのタイミングによって、食べる内容をざっくりと考えるんです。例えばちょっと遅めの朝食になってしまって、夜は早めの時間からの会食がある、なんてときは、ランチはナッツを食べるくらいで済ませてしまいます。仕事が遅くなりそうなときは、途中でおにぎりを食べるとか。
食事において、もちろん内容も大切なんだけれども、僕はどちらかというとタイミングを重視しますね。タイミングと、ボリュームの調節かな。
糖質などの制限はしません。あまり制限やルールに縛られたくないんですよ。とりすぎたら調子が悪くなるなと自分でわかっているのでわざわざ糖質や炭水化物の制限はしませんが、体調を悪くしない範囲で自然とボリュームを調節しています。
過去の失敗から、定期的な体のリセット期間を設けるように。
―食事や栄養について、何か失敗談はありますか?
失敗談はいっぱいありますよ。僕は30代のほとんどをグアム島で過ごしていて、その生活の中で、お仕事の一環として、来てくださる方々とお食事をしたり、お酒を酌み交わしたりすることも多かったわけですが、とにかく生活リズムがひどくて。夜中早朝に送迎に行くこともあるし、ピーク時なんかはいつ寝てるんだろう?という生活だったんです。そうすると、とてつもない食事になってくるんですよ。実は、グアムで20kgも太ってしまいました。
そのあと日本に帰国して、これじゃあ仕事にもならない、と思ったときに取り入れたのがファスティングでした。僕は動物的にみて消化吸収系がそんなに強いほうじゃないので、疲れとか毒が体にたまりやすい。だからこそ、そのリセットは定期的にするようにしていて、年に2〜3回はまとまった期間をとってファスティングをしています。
―栄養の知識は、普段どこから得ていますか?
栄養の知識は、幸いにも周りを見渡せば超詳しい先輩方がたくさんいらっしゃいますので、その方々から日々学んだり、月並みではあるが本屋さんに行けばついつい手に取ってしまったり。そんなところが知識のソースですかね。
#Rest
寝る前のストレッチは、自然と眠くなるまで丁寧に。
―日頃、睡眠、ボディケア、休養で気をつけていることはありますか?
寝る前のストレッチですかね。スタティックなものもアクティブなものも色々と取り入れていて、筋肉が緩んで骨のポジションが楽になり、自然と眠くなったと感じられるくらいまでやっています。
日頃から姿勢に気をつけていても、やはり重力を感じながら立っている以上、夜になると胸郭や胸椎の開き方が格段にかたくなってしまっているんですね。そのままの状態で寝ている方も多いと思いますが、そうすると寝ている間の呼吸器の働きなどにも関わってくるので、僕はしっかりストレッチをしています。えび反りのポジションのような胸郭を開いてのストレッチは、色々な角度から時間をかけてやることで柔軟性を高めていますね。
あとは、歩く上では足の関節のコンディションも大事なので、足のケアもしっかりしています。やっているときは、小一時間やっているのではないでしょうか。ケア中は、なるべくスマホやテレビを見ないようにしています。光を浴びると、目が冴えてしまうので。寝姿勢の中でなるべく背骨が安定したポジションを保てるように、枕にも気をつかっていますよ。
無計画な中に身を置いて、筋書きのない感動を得たい。それが休日の過ごし方。
―お休みの日はなにをされることが多いですか?
完全な休みはなかなかないけれど、無計画なプチ放浪をします。もちろん、日々お客様やイベントなどで活動しているときも刺激的なのだけれど、それってやっぱり計画的じゃないですか。計画的な生活から一旦離れようと、電車に乗るときも、行き先を決めずにただ単に電車に乗る。電車に飽きたら降りる。降りたら、そのときの嗅覚で行きたい方向に行ってみる。というようなことをやっています。
気づいたら日光のほうまで行っていたこともあるし、車で行くときも、ナビを適当にスクロールして、道もないような山奥にピンを立てて、一般道モードで行ってみるんです。途中でいいなと思った道があったらそっちに行ってみたり、その日中に帰れなくなったら朝帰ればいいやと思ったり。こんなふうに、無計画な中に身を置いて、筋書きのない感動を得たい。それが、休日のリフレッシュの仕方です。
―過去と比べて、休養について考え方に変化はありましたか?
サラリーマン時代は、休みは勝手に来るものであって当たり前だったけれど、今のような個人業になってくると休みを取るタイミングは自由ですよね。でも、全ての責任がのしかかってくると、実際休めなくなってくるんです。休んでいる自分が怖くなることもあります。そうすると、休みって貴重なものになってきますよね。休養というか、休日に対する価値観が変わった、という感じかな。
―吉川さんにとって、休養はどのような位置づけですか?
運動や仕事など、やるぞ!と思って体を使い切って突っ走った、そのアクティブな行動の反対側にあるのが休養だと思います。
言い換えると、思考と体とのバトンタッチといったところでしょうか。自分の心の勢いのまま体を酷使して、レストタイムに入ったときに、代謝のような非能動的な面に任せる、というイメージです。
だから休養に入る前には、そのバトンタッチがしやすいような環境を準備しておいてあげたいなと思います。体温調節だったり、必要な栄養素を揃えておくということだったり。むやみやたらに、体を使うだけ使って材料もいれず気を配らなかったら、何もできなくなってしまいますよね。
#Message
歩きの専門家である僕は、「歩く」ことは生きるというベクトルに向かって無限の拡がりを持つものだと思っています。ジムはハードルが高くて通えない人、運動が苦手でしたくない人、病み上がりの人…色々な人がいると思いますが、どんな人にも歩きの能力は備わっていて、皆、日々生活をするために歩いていると思います。その1歩1歩が将来への投資や貯蓄になっているのであれば、それって今からやっておいた方が良いのではないでしょうか?
腹筋とか、トレーニングとか、+αのことをやろうとしてしり込みしてしまう人でも、日々当たり前にやっている「歩く」ことのクォリティを上げるだけで、世界は変わりますよ、ということをもっと伝えたい。そして新たな視点から、フィットネスという世界を見ていただきたい。
もう1つ知ってもらいたいのは、ウォーキングスペシャリストになるメリットについてです。僕は、ウォーキングスペシャリストになるメリットは大きく3つあると思っていて。
1つが、今話したように、現行のフィットネス業界と一般社会の架け橋となれること。健康に不安はあるけれど、運動はなかなか始められない人にアプローチしていくにあたって、ウォーキングはうってつけだと思います。
2つ目が、これは指導者目線寄りになるけれど、「歩く」という動作はどんなスポーツにおいても絶対に生きる要素だということ。1歩踏み出せば歩きのロジックが入ると思えば、ウォーキングの指導がカバーできる範囲はとても広いはずです。野球畑だから野球しか教えられません、というのはあまりにも職域が狭すぎる。テクニカルな部分はテクニカルの専門家に教わるべきだけれど、ベースの部分という意味では、ウォーキングは非常に職域の幅が広いのではないでしょうか。
3つ目は、ファッショントレンドにまで対応して価値を提供できること。特に女性のファッションは、年ごと、季節ごとに大きく変わります。その服や靴に合わせた動きを伝えられるんです。ファッショントレンドが変わっただけ新しい仕事が生まれる。服飾文化も運動文化にもつながっている。これも、文化が分かっていてこそできることですよね。
ぜひ、ウォーキングからフィットネスや運動、服飾、色々な文化への見方を変えてみてほしい。そう思います。
吉川恵一
19歳からエアロビクスインストラクターとして活動。その後6年間、米国グアム島に渡り、レオパレスリゾートGUAMにて、スポーツ課マネージャーとして勤務。渡米前より、ボールルームダンス界において、元ワールドカップ日本代表のペアの現役時代からのパーソナルトレーナーとしても活動。彼らが経営する広尾のダンススタジオオープンに合わせて帰国後、プロから一般まで幅広い層のパフォーマンスコーチとして、現在に至る。その過程で、欧米人の生活習慣運動を基に、歩行運動の中でのエネルギー連鎖をより機能的に生かす、独自のテクニック理論を構築「ニュートラルキネティックウォーキング」と銘打って、一般の方々はもとより、運動指導者や女優陣への指導をはじめ、専門学校などでも講座を持つ。
【保有資格】
・フィットネスファスティング協会 理事兼ウォーキングスペシャリスト
・NESTA JAPAN プログラム開発アドバイザー
・FIT ARC ランニングアセスメント スペシャリスト