中学から始めた柔道で鍛えた組み力と、高校卒業後に始めた極真空手で鍛えた打撃を合わせ着実に実力をつけた菊野克紀。『DEEP』・『DREAM』で活躍後、2014年にアメリカの総合格闘技団体『UFC』にも参戦。2012年から沖縄古来の空手「沖縄拳法空手」を学び、その絶大な威力でKOの山を築き、オンリーワンなスタイルで注目を集めている。現在は格闘家として高みを目指すとともに、「漫画やゲームのような異種格闘技戦」というコンセプトと「親が子どもに見せたい格闘技」という志を掲げる武道エンターテインメント「巌流島」のエースとして活躍中。さらに自身のマネージメント会社である『株式会社KOKKI(コッキ)』を経営し、様々な活動に挑戦している。
そんな菊野克紀の強さと健康の秘訣は一体何だろうか。
その理由に、#exercise #nutrition #rest 3つの側面から迫る。
#Exercise
「型」が全ての動きの基本。集中力を保つ努力を。
―菊野さんは、日ごろどのような運動・トレーニングをしていますか?
1番メインになるのが沖縄拳法空手の稽古で、その中で型の稽古や空手のツキ、ケリをあてる感覚をつかむ稽古(ミット)をしています。あとは組み手ですね。そのほかには、フィジカルトレーニングとして、筋トレというよりは反応反射バランス系のトレーニングを行っています。ウェイトトレーニングをしていた時期もありますが、今はしていない、といった形ですね。さらに、今はテコンドーの練習をしています。
―最初に型の稽古がくるんですね。
そうですね、型が僕の動きの原理になっているので。ミットもボクシングとは原理から違って、骨格をそろえる、重心をそろえる、ということを目標にしたミットになっています。
―普段、運動しているお時間はどのくらいですか?
追い込みの時期は、1日2時間を2セットほどです。追い込みではない普通の時は、2時間を1セット、もしくは1時間にしたり、しなかったりといった感じです。オフは週1回のことが多いですね。
―水分補給の仕方やストレッチなど、運動の中で気にかけていることがあれば教えてください。
水分補給はこまめにしますね。あとは、集中力が切れた状態での練習はしないようにしています。集中力を保つために、物質的にもカフェインやサプリメントを摂ったり、呼吸でスイッチを入れたりとか、そういったことは気をつけています。
自分に大きな影響を与えた沖縄拳法空手とメンタルコーチング。
―今までで運動、トレーニングについて、考え方に変化があったことはありますか?
格闘技に関しては、5年前に沖縄拳法空手に出会ってから全てを変えました。また、2年前に苦しい時期があってからメンタルコーチングを受けるようになったんですが、このコーチングを通じて試合や人生についての考え方も結構変わったように感じます。
メンタルコーチングを受けるまでは、僕はフィジカルトレーニングを毛嫌いしていた部分があって。きついし、やらない時期があると(筋力が)落ちてしまうのを虚しく感じてしまうだとか、そういう時期があったんですよね。
けれど、試合で結果が出ない時期があってからメンタルコーチングを受けるようになって、自分が意図的に蓋をしている部分が見えるようになってきたんです。それが、僕の場合はフィジカルトレーニングだったので、じゃあそれをやってみようと。
瞬発力とか反応反射バランスとか、神経系のパフォーマンスを上げるようなトレーニングを初めてやってみると、すごく楽しかったし実際に目に見えて結果も出てきたので、こうやって色々な角度から刺激を入れていくと、脳は喜ぶしまだまだ進化していけるんだなと感じたんですよね。それはすごくよかったと思います。
あとは、走ることもそうですね。僕はそれまでは走るのが嫌いだったんですが、いまでは嫌いなことをやると気分が逆に良いというか、不安を潰していける気がして、そういうのもいいなあと思うようになりました。
僕は好きなことしかできないタイプで、格闘技は好きだから続いていますが、それ以外のことは基本的に3日坊主タイプなんですよ。トレーニングもそうで、やっぱり好きなことしかやりたくなくて。でも今回、好きじゃなくてやっていなかったことをやってみたら、お、いいじゃん!という気づきがあったから、やってみて良かったなと思っています。
―運動やトレーニングなどでモチベーションが上がらないときはありますか?
あります。そういうときの、乗り切り方はありません(笑) 結局僕は格闘技が好きだし、今やらなくてもどうせやるときはやると自分でも分かっているんですよ。なので、そんなに思い詰めずにやっています。だからこそ、格闘技を長く続けていられるのかもしれません。
―今どんな体にしたいなど、目標はありますか?
それなりに故障などを抱えている中で、やっぱり何より健康でいたいし、柔軟性があって可動域が広い体にしたいし、左右上下のバランスがとれた体にしたいですね。
「強くなりたい」―その一心で始めた格闘技。
―この格闘技の世界に入ったきっかけを教えてください。
中学校の時に柔道を始めたのですが、その時に始めた理由というのは、単純に「強くなりたい」というものでした。その後プロを目指したのは、高校3年生の時に柔道で負けて悔しかったことと、親友の進路に刺激されたという理由がありました。
親友2人がコンビ組んでお笑い芸人になってビッグになると言い出して、これは負けたくねえと思ったんです。僕も何かないかと考えた時に、結局昔と同じように「強くなりたい」という気持ちがあったので、その時に格闘家になると決めていました。そこから、極真空手を始めたんですよね。
―今、一番のモチベーションになっていることは何ですか?
僕は自分の夢を「ヒーロー」と掲げているんですよ。この「ヒーロー」というのは、武道精神の究極だと思っているんです。つまり、かっこいい生き方ですね。
僕が現在携わっている「巌流島」というものは格闘技としてエンターテイメント性もありますけれども、当然武道精神の発信という志も掲げていて、この巌流島と僕の夢というのが繋がっているんです。だからこそ、この巌流島を盛り上げることが、僕の夢を達成するための今の道となっています。
―菊野さんにとって、運動はどのようなものですか?
12歳の頃からずっと続けてきた格闘技は、自己実現のための手段というか、僕の中でずっと目標達成するための手段として打ち込んできたものなんですよね。やっていてすごく楽しいですし、自分が成長していることを感じられたときが、試合に勝つよりも何よりも嬉しいです。
試合に勝っても自分が強くなってない、成長していないと感じたらやっぱり嬉しくないですし、逆に負けたとしても、俺強くなってる、と思えたときは嬉しいです。
勝ち負けがつくから、そのプレッシャーのために努力をする、そして成長する。勝つために最善の努力をすることはとても重要ですが、その上で、勝つことが最終的な目的ではないということですね。
#Nutrition
ルールやルーティンはあえて設けない。食べたいものを食べるのが菊野流。
―日ごろ食事で気を付けていることはありますか?
これに関しては本当になくて(笑) 強いていえば、ストレスを感じないように心がけています。食事の内容に一貫性はなくて、ハンバーガーなどのファストフードも食べます。甘党なのでケーキやパフェも食べますし、揚げ物を控えてるといったことも一切ありません。
逆に、こうしなきゃいけない、あれはしてはいけないと決めると、守れなかったときに不安になってしまうのが嫌なので、ジンクスなども信じませんし、あえてルールを設けていない、といった感じでしょうか。サプリメントもいまは一切とっていません。基本3日坊主です(笑)
― 食事、栄養はどのような考えの元で摂取してますか?
減量するときに限っていえば、水を沢山飲んでいます。特に、なるべくいい水を飲むことで、体の中をきれいにすることを心がけています。試合直前に3,4kg体を絞るときは、1週間くらい前から水抜きというものをやるんですよ。例えば、お風呂に入りながら水を飲みつつ汗を出すなどして、水を抜く感覚を体に覚えさせるんですが、そのときの水はなるべくピュアなものにしていますね。
水抜き以外では、練習量の調整でがっつり体を絞っています。今度の試合は70kg級に出るんですが、僕はいま78kgなので、試合に向けて8,9kg落とすことになりますね。
―食事や栄養摂取で過去に失敗談があれば教えてください。
減量でいえば、急激に落とす、急激に増やす。この繰り返しが、体、特に内臓には相当負荷をかけているんだろうなと思います。あとは、水抜きをしたときにミネラルの関係なのか、反応反射が遅くなるような感覚はあって、実際に結果も芳しくなかったということがありましたね。
減量幅が大きくなるのであれば、それなりに計画的に落とすべきだと思いますし、カロリーなどの管理も必要ですし、戻すのも、減量が終わったからといってすぐにやるのは良くないなと思います。自分が良いパフォーマンスを出せる状態を作るのが理想的ですね。
#Rest
人生の3分の1を占める睡眠のために、良質な環境づくりを。
―日ごろ、睡眠で気を付けていることはありますか?
睡眠時間はなるべく取りたい人間なので、できれば8時間取りたいと思っています。あとは、枕は結構大切にしたいなと思っていて。首もよくないので、今も少しヘルニアが出てきてしまっていて、枕はいいものを使った方がいいなと思います。
寝ている時間って一生の3分の1もありますよね。それをいかに効率的な時間にするかで残りの3分の2のパフォーマンスが変わると思うので、睡眠にはお金もかけたいなと思います。なので、休養専用ウェアとか、良い布団などなどにこだわって、良い環境を作るようにしています。
ストレッチやマッサージなどに関しては、気になるときにするようにしています。基本的にはルールやルーティンは設けずに適当にしていたいので(笑)、臨機応変にやっています。
―日ごろ、一番リフレッシュになっていることはなんですか?
僕は漫画が好きなので、立ち読みがリフレッシュになっています。ジャンプ、マガジン、ヤンマガ、ヤンジャン、チャンピオン…読むのに忙しいです(笑) 少年モノが好きで、王道ですけどONE PIECEとかいいですよね。休みの日は、家族との時間を大切にしていることが多いです。子どもたちと遊ぶことも、リフレッシュになっていると思います。
菊野克紀
日本の男性空手家、総合格闘家。鹿児島県鹿児島市出身。株式会社kokki代表取締役社長。フリーランス。元DEEPライト級王者。
極真空手仕込みの打撃と柔道で培った身体バランスの良さがあり、フットワークを使わずサンチンで構え、中でも、前蹴りとミドルキックの中間の軌道で蹴り込む「三日月蹴り」を得意とする。また、2012年からは沖縄拳法空手道の山城美智に師事し、ファイトスタイルにこれを反映させている。